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「瀬戸内フォーラムin愛媛」セミナー「勝者の思考法」 講師 二宮清純氏

「瀬戸内フォーラムin愛媛」での二宮さんの講演を、ダイジェストでご紹介します。

     
「瀬戸内フォーラムin愛媛」セミナー
「勝者の思考法」 講師 二宮清純氏(スポーツジャーナリスト)

最近テレビでよく見かける、二宮清純氏。お忙しいところ、われわれ青年印刷人のために快く講演を引き受けていただきました。裏話あり、笑いありそして聞き応えのあるエピソードが満載でした。
内容をかいつまんで、ご紹介したいと思います。


               

星野阪神SD 巨人監督要請〜プロ野球界全体のビジネス
いわば禁じ手ともいえる監督要請に、星野さんが思った以上に興味を示したようにみられたが、これは巨人・阪神 両方の顔を立てようとした彼の気配りによるもの。
巨人にしてみれば、初めての外部勢力導入の試み。それだけ危機感を抱いていたのだろうが、今までのことを反省して、自己再生を目指すのが筋だろう。
今までの野球のビジネスモデルは、巨人戦に寄りかかった、いわば一局集中型のビジネス。
テレビの視聴率が5パーセントにまで落ち込んだ今では、費用対効果が見込めず、この構図は終焉を迎えようとしている。

サッカー界のリーダー川渕三郎キャプテンについて
川渕さんは会長就任の際、荒波に揉まれる船長という意味と、子ども受けを狙って「キャプテン」と、わたしが命名した。
サッカーのプロ化に向けたプロジェクトで、ある幹部の「景気が悪い、時期尚早だ」 「日本には野球がある。前例がないことは失敗するに決まっている」という発言に、川渕さんは机をたたき、「時期尚早だという人は100年たっても時期尚早という。前例がないという人は200年たっても前例がないという。やる気がないことを、ごまかして時期尚早だという。アイデアがないことを恥ずかしくて、前例がないという。仕事ができないヤツは、できない理由ばかりさがしている。仕事というのは、できないことをできるようにすることだ!」といった。
あの発言がなければ、Jリーグも、2002年ワールドカップ誘致もなかっただろう。今のサッカーの全てはゼロだっただろう。

               

リーダーの条件とは
ボトムアップの組織が理想だが、現実はそうはいかない。プロジェクトの成功にはリーダーの決断が欠かせない。21世紀のリーダーに必要な条件は「PASSION(情熱)」「MISSION(使命感)」「ACTION(行動力)」の3つである。この3つの条件がそろえば不可能を可能にする奇跡が起こせる。

SKILLよりWILL
ジュビロ磐田の中山雅史選手はどちらかといえば下手な選手。しかし彼はここぞというところで点を取る。記念すべき日本人初のワールドカップのゴールは、足の骨を折りながらもシュートを決めた。彼は自分の立場、自分の役目をよく理解している。だから能力以上の活躍ができる。
最近の選手は技術が先行する傾向にあるが、それだけでは伸びない。まず意志の力が大切である。
SKILL(技能)よりWILL(意志)。
意志があったら自然に技術は身につく。逆に技術だけでは、壁にぶち当たったとき解決できない。これはスポーツだけでなく、仕事にもいえることで、小手先だけの技術では今はしのげても、将来なんの役にも立たないことを痛感するだろう。

               

パイオニア野茂英雄
野茂がメジャーに行くとき、「自分はアメリカに英語を習いに行くのではない、野球をしに行くんだ」といったのは有名な話。それだけ目的意識が明確だった。
野茂のトルネード投法はフォームが安定しない、コントロールが定まらないとの理由から理解されなかったが、彼は頑なにフォームを変えなかった。やがて直球だけでは通用しないと、フォークボールを覚えた。しかしメジャーに行くと、ボールが回転しているかどうかで見破られ、フォークは見送られることを知った。そこで回転するフォークを編み出した。この回転するフォークがあるからこそ、今も直球とフォークだけでやっていけるのである。
このように世界に通用する選手は、見えないところで悩み考え、努力してオンリーワンの技術を身につけている。

オンリーワン=ナンバーワン イチローのはなし
イチローも野茂同様、特異な振り子打法を矯正するように言われ続けた。が、彼もそのアイデンティティを貫き通した。その頑固さが彼を成功させた。しかし彼は頑固なだけではない。新しい技術を覚えるのは人一倍どん欲だ。このように、社会で成功する条件は、「頑固で柔軟」であること。この2つの相反する概念が違和感なく同居することが名選手の条件。スポーツ選手だけでなく、社会で何かを成し遂げようと思ったら「頑固で柔軟」。この両方が必要だ。
そして、王貞治の1本足打法、かつての西鉄ライオンズの野武士軍団、東京オリンピック女子バレーの東洋の魔女など、世界でも日本でもトップに立つ人はそれぞれ個性的で、オンリーワン=ナンバーワンの技術を持っている。
ビジネスの世界でも同じことがいえる。生き残る企業は、この情報は当社しかないとか、このサービスは当社にしかないとか、この技術は当社しかできないみたいなものをみんな持っているものだ。

              

たぐいまれなる努力家 松井秀喜
松井はよく、天才だといわれるが、それは間違い。彼の天性のものは体が大きいことくらい。彼を天才にせしめたのは、苦手を克服する努力と向上心、そして問題意識。しかもそれを上から指摘されることなく、自ら自覚し自主的に取り組んでいったことに尽きる。
あと、誠意と気配りをいつも忘れていないこと。細かい気配りの積み重ねが将来の成功に結びつくのだ。

個人と組織
アテネオリンピックでは、金メダルラッシュに日本中が沸いたが、実は金メダルは個人競技のものばかり。期待をかけられた団体種目は無惨な結果となった。が、負けを素直に認めないと、前へは進めない。
個人をどうやって組織に落とし込んでいくか。個人と組織の関わり合いが大事な時代になってきている。

               

「有言即行」 北島康介選手に教えられたこと
アテネオリンピックで金メダルを2個獲得した、北島康介。彼は競技にかける意気込みというか度胸が、他の選手とはまるで違う。しかも彼は自分のピークをうまく競技に合わせて持って行ける。
金メダルを取って、さすがに北島選手は有言実行の人ですねというと、「有言実行なんてダメです。遅すぎます。有言即行(有言速攻)じゃなくっちゃ勝てませんよ」といわれた。
さすが、21世紀の勝者の考え方は違うなと実感した。

               

二宮氏から見た印刷業界(質疑応答より)
昔、新聞記者をしていたころに活字を拾わされたことがある。今でも、バイカク定規を大切に持っている。
印刷業は、特に近年急速に変化を遂げている業種だと思う。逆にデザイン、写植など昔一所懸命身につけた技術が役に立たなくなっている。
加えて、技術の進歩の想像がつかない世界。それこそ柔軟さがないと、ついて行けないだろう。
以前は編集の仕事をしていても、人間同士の付き合いというものがあったように思う。今は入稿が手渡しからFAX、FAXからメールへと機能的かつスピーディになったが、人間的な付き合いがなくなってしまって寂しい。
一緒にひとつのものを作っているんだという、共同体みたいな関係が懐かしい。



2005年9月17日(土) 16:00〜17:30

 愛媛県松山市道後 ホテル八千代 「もぐら房」にて

文責 愛媛印刷人青年会 阿部国弘

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